Self portrait : I wear my late grandma’s clothes.
Textデジタルカメラ撮影
2019
祖母の家の中で祖母の遺品の服を着た倉敷が歩く。
容姿の似ている孫が遺品を身に纏い、あたかも祖母のように家中を徘徊する事により、祖母の霊を憑依させる。
倉敷が撮影をした祖母の死後の時間軸・死後に徘徊する祖母の霊、そして倉敷が写真のなかで過去にあった祖母の姿へと変わる過去の再現・生きていた当時の祖母の再現。
二つの時間軸が交差する同一場所で倉敷と祖母は同時に存在する。
「記憶に関わる儀式」の数々は厄払いの行為となり、過去が持つ不可避の性質を未来の希望の種へと移し替える。
協力
倉敷ジュエリー、 檜皮 一彦
【藝祭2019】
2019/9/6(金)-8(日)
東京藝術大学上野キャンパス(東京)
【サマータイム9192631770】
展示者:磯崎隼士・倉敷安耶・中風森滋
今回の展示のキーワードは「時間」である。現代の国際単位系では時間の基本単位として秒を定義している。1秒の定義は「セシウム133(133Cs)の基底状態にある二つの超微細構造準位関係の変遷に対応する放射の9192631770(約100億)周期にかかる時間」である。サマータイムとは1年のうち夏を中心とする日の出時刻が早まる時期に、太陽が出ている時間帯を有効活用する目的で標準時より時計の針を30分から1時間進める制度である。欧米を中心に導入されている。また、その時刻そのものを指す。時間というものはビッグバン以降、この世が生まれた時からの抗えない超自然的な流れである。それに対し、人間が1秒という時間の速度を定義し、またその反面で人為的に時刻を1時間進めるなど我々の時間に対する概念への曖昧さを感じる。そもそも時間というものは不可視であり、具体性を持たない。
この展示では作家3人のそれぞれの作品との時間の関係性について着目する。そこには個々に違う時間に対する見方や、概念を持っていることが感じられるだろう。
倉敷は今回の展示では、祖母の死の前後についての作品を制作する。祖母が死の前日に見た幻覚を再現することで、鑑賞者は「祖母の死」の時空間から後の世界線にいながらも作中では前線に触れることとなる。礒崎の作品は人間の皮膚を模したものや、身体性を含んだ絵画などがある。作家自身の肉体にもタトゥーとしてドローイングが彫られており、彼の老いと共に変容する。作品と心身の結び付きが強く、制作物はまるで生死を基とした人生という時間軸の中で生まれ分技していく彼の相同体のようである。中風はポップアイコンとしてキャラクターを主に扱った制作を行う。我々がキャラクターに対して持つ当時の現象を記憶の中で呼び覚まし、その普遍性を実感させる。また一方で、ネパールでは国旗にも使用されているように赤色が多用されていることに着目しており、中風はそこに夕暮れの時を感じるという。今回の展示では元来より用いるキャラクターと、ネパールの赤色を掛け合わせた作品を展示する予定である。